バンク角、選手比較とライディングの歴史

レース

マルケスの強さは抜きん出ている。

代表的なテクニックで、深いバンク角が注目されている。彼はバンク角で、驚異的な70度を記録。ほぼ転んでいるような状態だ。

その体勢から状態を立て直すバランス感覚、マシンを操るテクニックは天才といわざるを得ない。ほかの人であれば、事故を起こしてもおかしくない状態なのだ。

ここでは、彼のライディングテクニック、そしてMotoGPのライディングスタイルの歴史をのぞいてみよう。

マルケス選手の凄さ・バンク角

これまでMotoGPのバンク角、最大傾斜角度は64度。ホルヘ・ロレンソがヤマハ時代に出した記録。それからすぐにマルケス選手が、66度を出し、そして昨年は70度。誰よりも深い切り込みだ。

マルケスの強さの秘訣は、フロントタイヤの滑りをコントロールにあるといわれている。

フロントタイヤが滑れば転んでしまう。彼はスライドしすぎて転びそうになるギリギリのところで、ヒジを当ててバランスを補正しているというのだ。

またコーナリングにハンドルをフルロックさせ、スリックタイヤを滑らせる。その牽引力を有効活用しバランスを取っているという。

傾きの難しいマシンを操るために、コーナリング150km/hの状況で、これだけの技を感覚的に行える選手ということだ。

MotoGPのライディングスタイルとバンク角の歴史

近年、電子制御システムやタイヤの進化があるように、モータースポーツでは、ライダーのテクニックとマシンのテクノロジー進化が交錯している。

歴史の初めから、バンク角70度に達するまでのレベルになるまで、ライディングスタイルは変化し発展してきた。

ではどのように変化していったのか。その火付け役となった主要なライダーたちを見ていこう。

ケニー・ロバーツのバンク角

MotoGPの歴史の中で、革新的なライディングスタイルを見せた最初の選手は、1970年代終わりに活躍した、アメリカのケニー・ロバーツ選手だ。

当時は500㏄エンジンパワーに厳しい制限が設けられていた。

彼はスロットル制御を可能にする大きなグリップを求め、その絶妙なコントロールテクニックと、コーナー内側に大きく腰をずらすハングオフ、そしてヒザを擦りつけるというスタイルを行った。

これが、これまでのMotoGPのライディングを一変させた。

その後の80年代は、アメリカやオーストラリアの選手たちが彼のスタイルにチャレンジし、確立しながらしのぎを削っていた。

バレンティーノ・ロッシのバンク角

そして次の変革は、バレンティーノ・ロッシだ。

彼はグリップとスライド走法を駆使し、テクノロジーの進化に対応した緻密な計算とレース構成を行ってきた。

また多くが行っている「足出し走法」は彼が始めたものだ。ブレーキング時に内側の足をステップから大きく外すやり方だ。

彼自身はフィーリングで行っているものだが、当時彼を真似したがるライダーは多かったと考えられる。

ホルヘ・ロレンソのバンク角

続いてホルヘ・ロレンソ元選手。彼はヤマハ時代、ロッシに対抗する形で開発されたマシンを、まるで250ccのバイクのように軽やかなスタイルで乗りこなし、抜群のライディングセンスを見せた。

マシンの力を活かしたテクニックを見せるスマートな走法が、MotoGPでのお手本として改めて注目・認識されている。

マルク・マルケスのバンク角

そして新たな変革時代を作っているのがマルク・マルケス選手。

ロレンソ選手もバンク過度は64度を出しており、かなり深いが、バイクには平行なスタイル。

一方マルケス選手は、前傾姿勢で腰を大きくずらしている。体が離れるギリギリの体勢だ。転んだのを立て直したかのように見えるが、バイクの性能に合わせて彼が動きを限界まで調整している。

バンク角で分かる、MotoGPのバイクとライダーの進化

昔のバイクは、ライダーがバイクから腰を落として走行するなど想定外だった。それが今は、そうした側面でも計算したうえで設計されている。

もちろん、メーカーごとに特徴がある。ドゥカティなどは直進のパフォーマンスに強いが、倒しにくくやはりコーナリングの操縦はかなり難しい。

いずれにせよ、マシンの進化にライダーが合わせ、ライダーの進化にマシンが合わせてきた結果、今のMotoGPのスタイルができているというわけだ。

テクニックとテクノロジーがピッタリ一致するのは簡単なことではない。しかもコーナー150km/h以上のスピードで行われている。常人には考えている暇さえないだろう。

これからまた、MotoGPのマシンやスタイルがどのような進化を見せてくれるのか楽しみだ。

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